にぼしめし

備忘録

2017年5月の読書概況

長すぎた春もいつの間にか去り、街はすっかり夏の匂いに包まれています。
早くもやや夏バテ気味でへたっております。
2017年はインプットに力を入れようと決意したものの、消費的に読み散らかしているだけであることにふと気付いたので、そこで敬愛しております 宇宙、日本、練馬 さまに倣い、一ヶ月毎に読書やその他の状況を簡単にまとめることを試みようと思います。

 2017年5月に読んだ本は21冊(計6679ページ)でした。

▽お気に入りの本

 

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)
 

 とても良かった。twitterのタイムラインでしばしば『正解するカド』が話題になっているのを目にし、野﨑まどに興味を持って軽い気持ちで読んでみたがものすごい読後感だった。
結末に憤慨する人もいるかもしれないが、私は途方もなく好きだと思った。何気ない台詞である「私を愛していますか?」が読了後にかすかな痛みを伴ってじわりと沁みる。
短時間でさらっと読めるのでぜひお試しいただきたい。

 

愛するということ

愛するということ

 

 フロムの論じる「愛」が途方もなく好きだと思うと同時にゆるやかな絶望を感じた。
愛とは技術であり、愛する対象ではなく自分自身の問題だ。愛することは求めることではなく与えることだ。という論旨は鮮やかで、今までぼんやりと感じていた靄を晴らしてくれたような心地になった。愛は技術なのだから能動的にならない限り習得はできない。自省して、自分自身の「愛」の不足を感じた。フロムの説く「愛」は私の価値観からしてあまりに理想的であるが故に一生かかってもその領域には辿り着けないのではないか、と思わされた。
新版を読んでもう一度きちんと考えてみたい。

 

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

 

 手遅れの愛情は虚しく美しい。大学生である泉と、彼女の高校時代の恩師である葉山先生の恋のような愛のような何かの話、と抽象化してしまうのは簡単だ。しかし言葉では言い表せない何かがそこにはあった。

これからもずっと同じ痛みをくり返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に。そして私はふたたび彼に出会うのだ。何度でも。

どうしようもない感傷として自己に寄り添い続けることが許されるのは「恋」でしか有り得ない。過ぎ去った日々の一瞬を何度も懐古することで永遠となる。その度に新鮮な痛みを感じて、過去なのに過去にならない。それは途方もなく愚かだが美しいことなのかもしれない。
恋もまた絶望である。恋は愛と比べて「期待」という側面が強い。期待と失望はコインの裏と表の関係にあるので、恋をしてしまったら失望や諦念を受け入れる覚悟をしなければならない。恋が叶わぬものと悟ってしまった瞬間、両手いっぱいに抱えていた甘い思慕を殺さねばならない。何かを殺した者にしか得られない美しい翳りと共に生きていくことになる。


恋にも愛にも絶望した5月でした。

 

▽その他読んだ本とひとこと感想

 

あなたの知らない心理学―大学で学ぶ心理学入門

あなたの知らない心理学―大学で学ぶ心理学入門

  • 作者: 中西大輔,今田純雄,志和資朗,古満伊里,渡邊芳之,三浦麻子,小塩真司
  • 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
  • 発売日: 2015/07/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 心理学を生業としたいと考えている人向けの平易な入門書。学んでいく足掛かりを与えてくれる。

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ノックス・マシン (角川文庫)

ノックス・マシン (角川文庫)

 

 紙の本でしか出来ない仕掛けに泡坂妻夫を思い出した。SFと古典ミステリへの愛に溢れている。

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三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

 

 同著者『麦の海に沈む果実』と関連しているようなそうでないような感覚にぞわぞわした。先に『麦の海に沈む果実』を読んでおくと吉かもしれない。煙に巻かれたような読後感。

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グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

 
グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

 

 正直、私には合わなかった。ひたすらに露悪的で、読後に沈んだ心地になる。

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神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

 

 『輪るピングドラム』を再視聴して、劇中の小道具として登場する『かえるくん、東京を救う』を読んでおきたくなった。メタファー性が高いので、読後に考察を漁るのが楽しかった。折に触れてふと思い出すであろう物語だった。
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AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

 

 久々にラノベらしいラノベを読んだな、という感想を抱いた。

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倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

 

 「女学生」と呼ばれていた時代の少女たちの優しさと悪意に満ちた交友の様子と、リレー形式で綴られていく作中作が交互に配されている構成が面白かった。

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サクラ咲く (光文社文庫)

サクラ咲く (光文社文庫)

 

 もともと中高生向けに書かれた作品であるため、あっさりとした仕上がりになっている。平易だからこそ辻村深月の哲学や伝えたいテーマがはっきりと浮き上がっている。
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黒と茶の幻想 (Mephisto club)

黒と茶の幻想 (Mephisto club)

 

 男女4人組が旅行をする。たったそれだけの起伏の無い地味な話でありながら、一気に読みきってしまったのは恩田陸の筆力のせいだろう。4人がそれぞれの心情や秘密を少しずつ吐露していくのを読者として見守ることには、どこか覗き見にも似た快感がある。
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0能者ミナト (メディアワークス文庫)

0能者ミナト (メディアワークス文庫)

 

 5月は私の誕生月であり、有り難いことに友人2人からお祝いとして頂いた本である。普段全く読まないジャンルの小説だったが楽しく読ませていただいた。強大な力を持つ敵を正攻法でない方法で倒す、というストーリーラインが面白い。積読を消化したら続刊を読み進めていきたい。
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暗黒女子 (双葉文庫)

暗黒女子 (双葉文庫)

 

 雰囲気がとても良い小説だった。上品で清楚な女学院の中の悪意というテーマが好きだ。登場人物たちの独白という章立てが面白く、徹底した一人称の記述であるためそれぞれの矛盾を見つけるのが楽しい。結末も毒が潜んでいて好きだ。
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少女 (双葉文庫)

少女 (双葉文庫)

 

 湊かなえらしい構成と結末だった。少女たちの無垢な悪意に満ちていて、その悪意の質が軽薄で性質の悪いものであるため読後感はすっきりしない。
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リリイの籠

リリイの籠

 

 読んだはずなのだが記憶に残っていない。
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 どうしようもない先輩に振り回される生真面目な後輩、という構図が好きだ。なんだかんだでその無茶苦茶な行動に巻き込まれるのを楽しんでいる様子が微笑ましい。余談だがゴツボ×リュウジの絵柄はとても好きだ。
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オーブランの少女 (創元推理文庫)

オーブランの少女 (創元推理文庫)

 

 それぞれの短編に文化的な色合いが濃く滲んでいたのが印象的だった。表題作が一番好きで、閉鎖的な学園の様子に恩田陸『麦の海に沈む果実』を想起した。
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 不謹慎なタイトル通り、ブラックジョークの利いた内容で非常に面白く読んだ。登場人物が悉く頭のネジが外れた人間ばかりであるし、主人公の記憶喪失にまつわる謎は一切明かされずに終わってしまうし、メチャクチャな印象すら受けるのだがそれがかえって胡散臭い魅力を醸し出している。グロテスクな状況に際しても淡々と受け取るあたりが『黒鷺死体宅配便』めいた雰囲気を感じた。
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中庭の出来事 (新潮文庫)

中庭の出来事 (新潮文庫)

 

 構成が複雑すぎて正しくは把握しきれていないのだが、それでもなんとなく「面白かった」と思える不思議な小説だ。どこまでが作中作なのか、読者である私はどこに位置しているのか、これもまた煙に巻かれるような読後感だった。

▽2017年5月読了本一覧

  1. 中西大輔・今田純夫編『あなたの知らない心理学―大学で学ぶ心理学入門』
  2. 法月綸太郎『ノックス・マシン』
  3. 恩田陸『三月は深き紅の淵を』
  4. 桐野夏生『グロテスク(上)』
  5. 桐野夏生『グロテスク(下)』
  6. 村上春樹神の子どもたちはみな踊る
  7. 田中ロミオ『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』
  8. 皆川博子『倒立する塔の殺人』
  9. 辻村深月『サクラ咲く』
  10. エーリッヒ・フロム『愛するということ』
  11. 恩田陸黒と茶の幻想
  12. 葉山透『0能者ミナト』
  13. 秋吉理香子『暗黒女子』
  14. 湊かなえ『少女』
  15. 豊島ミホ『リリイの籠』
  16. はやみねかおる『僕と先輩のマジカル・ライフ』
  17. 野﨑まど『[映]アムリタ』
  18. 深緑野分『オーブランの少女』
  19. 春日武彦『様子を見ましょう、死が訪れるまで 精神科医・白旗慎之介の中野ブロードウェイ事件簿』
  20. 恩田陸『中庭の出来事』
  21. 島本理生『ナラタージュ』