にぼしめし

備忘録

2017年6月の読書概況

 あっという間に過ぎ去った6月ですが、思えば本ばかり読んでいましたね。

2017年6月に読んだ本は37冊(11705ページ)でした。

 ▽お気に入りの本

 

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

 

 『2』を読むために経た5冊の道のりも相俟って印象的な一冊となった。
個別に感想記事を書きました。(ネタバレあり)

niboshimeshi.hatenablog.com

 

 すっかり森博嗣のVシリーズに嵌ってしまった6月だった。中でも『恋恋蓮歩の演習』は印象的だった。詳しくはネタバレになるため伏せるが、某主要人物の暗躍振りがエピローグで明かされるのが毎回大好きで、本作品のそれは本当に頭を抱えるほどだった。『恋恋蓮歩の演習』というタイトルも好きだ。終盤で明かされる物語の全体像を踏まえて改めてタイトルを見た時の感慨が最高に良かった。
Vシリーズは生き生きとしたキャラクターが魅力的だ。大切に読み進めている。

 

 

チョコレートコスモス (角川文庫)

チョコレートコスモス (角川文庫)

 

 文句無しに楽しめた一冊だった。同作者の『蜜蜂と遠雷』のように、芸術・エンターテインメントの世界の熾烈な戦いを垣間見る話がとても好きだ。本作品に登場する佐々木飛鳥のような、恩田陸の描く「圧倒的な天才」はとても清々しくて魅力的だ。その才能はあまりに突出し過ぎておりフィクションじみているが、だからこそ読者に与える「天才を見た興奮」はすさまじく、駆け抜けるようにエンディングへと導く。

 

▽その他読んだ本とひとこと感想

神様のパラドックス〈上〉 (ハルキ文庫)

神様のパラドックス〈上〉 (ハルキ文庫)

 

 語り口はライトなのだが、扱っている内容が専門的かつ説明的で読み進めるのにエネルギーが必要だった。下巻はもう少し後で読みたい。

 

 

被告 最高裁―司法体制を問う十五の記録

被告 最高裁―司法体制を問う十五の記録

 

 タイトル通り、司法体制に対して批判的に問題提起をする論説集である。扱われている各事例を知る契機としては有用に感じた。

 

 

 このシリーズの魅力は「さらりとした語り口で重い事件を軽く解決していく」点にあるのではないだろうか。6巻の引きが意味深だったので次巻が気になっている。

 

今のところ安達の「好き」としまむらの「好き」が等価でないことが微笑ましくあり、一方で切なく感じる。

 

イノセント

イノセント

 

 神父である如月の「許し」が物語全体にゆるやかな救いを与えているように思う。

 

一千一秒の日々 (角川文庫)

一千一秒の日々 (角川文庫)

 
あられもない祈り (河出文庫)

あられもない祈り (河出文庫)

 

 2冊とも物語の内容は今一つピンと来なかったけれども、島本理生の得も言われぬ抒情的な描写と雰囲気作りは大好きだと思った。

 

舞面真面とお面の女 (メディアワークス文庫)

舞面真面とお面の女 (メディアワークス文庫)

 

 健康ランドに行くくだりがとても好きだ。

 

 この話もそうなのだが、野﨑まど特有の、種明かしの後に思わず笑ってしまうような二段底が存在するのがとても好きだ。

 

 森博嗣・Xシリーズの2作目までを読んだが、事件の毛色が全く異なっていて面白かった。より日常的な謎としての色が強い『キラレ×キラレ』が良かった。読み進めていこうと思ったのだが、大学で働く西之園萌絵が度々登場するのでS&Mシリーズを優先することにした。

 

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

 

 終盤までの展開に冗長さを感じてしまったが、希望の見える結末とタイトルの秀逸さがなんとなく頭に残っている。

 

 

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

 
月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

 
夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

 
魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

 

森博嗣・Vシリーズは主要登場人物である瀬在丸紅子・保呂草潤平・香具山紫子・小鳥遊練無の4人の軽妙な掛け合いが非常に心地よく大好きなシリーズである。特に保呂草潤平と、彼の素性を知る紅子さんの意味深長な会話がとても秀逸で毎回唸らされる。

 

 

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈1〉 (電撃文庫)
 

 群像劇を期待して読んだら肩透かしを食らったのだが、キズナと̬有生と由起の3人の恋愛模様を楽しむものだと思い直して読むと楽しめた。しかし由起は報われないのだろうな、と思ってしまう。

 

 

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

 とても良かった。個人も社会も断片的なものの集積であり、モザイクアートのようでありどこを拡大するかで色も絵柄も変わる。一貫性がないのだからはっきりとした正解も不正解もなく、結論など出なくてもいいのかなと許しのような感覚を得た。

 

 

サマーサイダー (文春文庫)

サマーサイダー (文春文庫)

 

 市川春子さんの装画と挿絵がとても似つかわしくて良かった。青春小説ともSF小説とも取れる奇妙な空気感の漂う物語だったが、印象的なシーンを思い返してみるとやはり青春小説なのかと思う。ラストシーンのミズと三浦のキスが刹那的なのに永遠を感じさせるような手触りがあって胸が詰まる。自己の努力を超えたどうしようもない運命による業にやるせなさを感じつつも、現在の美しさを引き立たせているように思えた。

 

 

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

 

 結末とエピローグがとても印象的で、多くを語りすぎないまとめ方が非常に好きだ。高度な情報化社会と、その中で生きる人々は脳にコンピュータを埋め込むことを義務付けられている、という世界観の塩梅がちょうど良くSFながらすんなりと入り込むことができた。舞台が京都であることはサイバー的な印象とのミスマッチを生んでいるが、却って不思議な魅力を醸し出している。

 

 「この世で一番面白い小説」が物語の中で重要な役割を果たしているという点で『[映]アムリタ』と似た雰囲気を感じた。

 

 

 さなかのフルネームに震えて、その後すぐに『2』を読んで何とも言えないやるせなさに全身を包まれた。

 

 

ありふれた風景画 (文春文庫)

ありふれた風景画 (文春文庫)

 

 とても良かった。読了してからタイトルに込められた祈りのような願いのようなものに唸らされた。琉璃も周子も他人の作った勝手なイメージの中でずっと独りでいた人間で、それを運命と言わんばかりに諦め受容していた。そんな殻に阻まれることなく出会った2人がバイアスのかかっていないお互いの姿を認識して、ゆるやかに寄り添うことができることに最上の幸福を感じた。2人がひとつになるのではなく、2人が2人であるままに一緒にいるからこそ、特別な2人だけれど「ありふれた風景画」なのかな、と思う。

 

 愛はポジティブな面ばかりを持っているのではなく、ふとした瞬間に呪いにも転じる危うさを抱えていることを感じ取れる内容だったのが良かった。叙述トリックに関しては不運にも途中で気付いてしまったので驚きは無かったが、そのお陰で物語の根底に流れる愛や呪いや許しといったテーマに思考を巡らせることが出来て良かった。

 

 

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

 

想像していたよりもずっと静かで詩的な物語だった。空を駆ける話でありながら、最も印象に残っているのは海に落ちて揺蕩う回想だった。

 

 

禁じられた楽園 (徳間文庫)

禁じられた楽園 (徳間文庫)

 

 『チョコレートコスモス』『蜜蜂と遠雷』『夜のピクニック』とは正反対な方の恩田陸作品である。現実から遊離したような空間で繰り広げられる物語は、判然とした恐怖が漂いつつもどこか幻想的な美しさも持ち合わせている。結末ははっきりとしないが、謎に引っ張られてラストに至る感覚は心地よい。

 

あなたの呼吸が止まるまで (新潮文庫)

あなたの呼吸が止まるまで (新潮文庫)

 

 最後の最後で復讐という呪いを掛けて、希望を持たせる結末になっていたことに安堵した。

 

 

V.T.R. (講談社文庫)

V.T.R. (講談社文庫)

 

 講談社ノベルス版で読んでしまったので「赤羽環の解説」が読めず悔しい思いをした。

 

 

グレン・グールドのピアノ

グレン・グールドのピアノ

 

 ピアニストのグレン・グールドが愛したピアノに着目して書かれたノンフィクションである。調律師やスタインウェイ社に着目した章があることにより、グールド自身についての理解も多角的に深まったように思う。

▽2017年6月読了本一覧

1.機本伸司『神様のパラドックス(上)』
2.『被告 最高裁ー司法体制を問う十五の記録』
3.入間人間嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(4)絆の支柱は欲望』
4.入間人間嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(5)欲望の支柱は絆』
5.入間人間安達としまむら(2)』
6.島本理生『イノセント』
7.入間人間安達としまむら(3)』
8.島本理生『一千一秒の日々』
9.島本理生『あられもない祈り』
10.野﨑まど『舞面真面とお面の女』
11.恩田陸チョコレートコスモス
12.野﨑まど『死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死』
13.森博嗣イナイ×イナイ
14.辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』
15.森博嗣人形式モナリザ
16.壁井ユカコ『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(1)』
17.壁井ユカコ『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(2)』
18.壁井ユカコ『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(3)』
19.森博嗣月は幽咽のデバイス
20.岸政彦『断片的なものの社会学
21.壁井ユカコ『サマーサイダー』
22.野﨑まど『know』
23.野﨑まど『小説家の作り方』
24.野﨑まど『パーフェクトフレンド』
25.野﨑まど『2』
26.あさのあつこ『ありふれた風景画』
27.森博嗣キラレ×キラレ
28.杉井光『すべての愛がゆるされる島』
29.森博嗣夢・出逢い・魔性
30.森博嗣スカイ・クロラ
31.恩田陸『禁じられた楽園』
32.入間人間嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(6)』
33.島本理生『あなたの呼吸が止まるまで』
34.辻村深月『V.T.R.』
35.ケイティ・ハフナー『グレン・グールドのピアノ』
36.森博嗣魔剣天翔
37.森博嗣恋恋蓮歩の演習