にぼしめし

備忘録

2018年5月の読書概況

 久し振りに読書感想をまとめることにしました。今度こそ習慣化したいものです。

 

2018年5月に読んだ本は16冊(6237ページ)でした。

 

 ▽特に印象深かった本

 

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

 

 森博嗣『ψの悲劇』

遺書ともとれる手紙を残し,八田洋久博士が失踪した。大学教授だった彼は、引退後も自宅で研究を続けていた。失踪から一年、博士と縁のある者たちが八田家へ集い、島田文子と名乗る女性が、実験室にあったコンピュータから「ψの悲劇」と題された奇妙な小説を発見する。そしてその夜、死が屋敷を訪れた。失われた輪を繋ぐ、Gシリーズ後期三部作、第二幕!

 待ちに待ったGシリーズの新刊である。前作の『χの悲劇』ほどの衝撃は無かったが、「失われた輪を繋ぐ」とは言い得て妙な煽り文だと感じた。そことそこを繋いでしまってどうするの。森先生は怖いなあ……。6月発売のWシリーズ新刊が一層待ち遠しくなった。

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 辻村深月かがみの孤城

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

  ワンテンポ遅れて読んだ話題作。大変良かった。辻村さんの近作はあまり肌に合わないな……と思っていたので、最新作の『かがみの孤城』が初期作に近い作風だったことがとても嬉しかった。『かがみの孤城』も当てはまるのだが、辻村さんの作品はフィクションが差し伸べる救いの手を感じさせるものが多くて好きだ。「この作品に救われる人がきっといる」と確信させてくれる物語は素晴らしい。

 

キングレオの冒険 (文春文庫 ま 41-1)

キングレオの冒険 (文春文庫 ま 41-1)

 

京都を舞台にスター探偵が駆ける!
京都の街で相次いで起きた殺人事件。なぜかすべて、シャーロック・ホームズ譚を模していた。解決に乗り出したのは、日本探偵公社の
若きスター・天親獅子丸と、助手の大河。大河は獅子丸をモデルにした『キングレオ』シリーズのスクリプトライターでもあった。無関係に思われた事件を追っていくと、謎の天才犯罪者の存在が浮かびあがってくる。エスカレートする犯人の挑発。獅子丸はついに、師である老獪な名探偵と対決することに!
有栖川有栖さんも「なるほど、これは名探偵だ。その推理は、速い、鋭い、面白い」と推薦!!
ロジックとキャラクターの魅力を兼ね備えた新たな名探偵小説の誕生です。

 円居さん入門に最適かと思う。円居作品といえば癖のあるキャラクターたちが独特の世界観の中で論戦を繰り広げることが魅力だが、『キングレオの冒険』は独特さが魅力を殺さない程度に抑えられており、読みやすい。最後の短編は「いつもの円居挽」であるのだが……。
 天親大河が不憫でかわいい。

 

武道館 (文春文庫)

武道館 (文春文庫)

 

 朝井リョウ『武道館』

【正しい選択】なんて、この世にない。
「武道館ライブ」という合言葉のもとに活動する少女たちが、最終的に”自分の頭で”選んだ道とは――。

様々な題材を通して現代を描き続けてきた著者が今回選んだのは「アイドル」。
視聴者のあいだで物議を醸したドラマ化を経て、待望の文庫化。

 アイドルグループを通して少女の成長を描いた作品。しかし、単なる「アイドルもの」にとどまらない奥行きがあるように思われた。消費することとお金を遣うことが必ずしもイコールではなくなった現代で、わたしたちはどこに価値を見出し、あるいは、見出されるのだろうか。お金や時間のような、有限なものの使い道にこそ個性が顕れるという話が印象深く、考えさせられた。

 

▽その他の読了本

 

霊応ゲーム (ハヤカワ文庫NV)

霊応ゲーム (ハヤカワ文庫NV)

 

 パトリック・レドモンド『霊応ゲーム』

 復刊されたほどの人気作ということもあり、あっという間に読了した。結末がやや消化不良ではあるが、狂気に満ちた雰囲気は良かったように思う。嵌る人はとことんのめり込むだろうな、という印象を抱いた。

 

 

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

 

 里見蘭『天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和』

 タイトルがすべてを物語っているタイプの作品。ライトミステリなので気軽に読める。YouTuberなど、取り上げている題材が時事的であり新鮮に楽しめた。

 

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

 

 円城塔『エピローグ』

 読むのに体力が要る……。円城塔『プロローグ』ほどではないにせよ、SFとメタの間を漂流するような、地に足のつかない感覚に身を任せていたらいつの間にか読了していた。すべてを理解できたとは到底言い難いのだが、ところどころにはっとするような詩的な文章が見られるのが心地良かった。『プロローグ』と併せて、唯一無二の小説だと言える。

 

さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)

 

 麻耶雄嵩『さよなら神様』

 麻耶雄嵩神様ゲーム』は未読のまま読了。初めに犯人が明かされるという構成の下で変化球を投げてきたのは凄かった。最後のタイトル回収に笑ってしまう。

 

鴉 (幻冬舎文庫)

鴉 (幻冬舎文庫)

 

 麻耶雄嵩『鴉』

 メルカトル鮎シリーズ。しかしメルカトル鮎は顔を出す程度なのが彼らしい。その割に振る舞いは悪質なのだが……。
 どんでん返しの名作に数えられている『鴉』だが、奇抜な発想と展開が麻耶雄嵩らしいように思える。

 

工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫)

工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫)

 

 森博嗣工学部・水柿助教授の日常

 こんなに楽しそうな森先生の語り口は初めて見た……。まるで森先生の分身のような水柿助教授の日常は小さな謎に満ちていて、日常と非日常の境目を軽やかに渡っていく様子がとても面白かった。シリーズを読み進めたい。

 

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

 

 辻村七子『マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年』

 近未来SFと言えるだろう。人間のようなアンドロイドと、アンドロイドのような人間……と思っていたら終盤の種明かしで腑に落ちた。アンドロイドがいる社会は様々な作品で描かれているのだが、独自の世界設定が興味深かった。「海を見る」が死のメタファーとして用いられているのが美しいと思った。

 

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

 

 麻耶雄嵩貴族探偵

 ドラマは未視聴。軽い短編集という印象だった。自分で推理をしないのに探偵を名乗る貴族探偵というキャラクター性が面白い。それでもメルカトル鮎と比べれば何倍もまともだ。

 

 『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー

 執筆陣が豪華すぎて訳が分からなくなる。メルカトル鮎シリーズが目当てだったが、麻耶さん以外だと綾辻さんの短編が良かった。いきなり綾辻さんの日記が始まったのかと思って爆笑してしまったし、オチがまた狡い。

 

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

 

 道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

 叙述トリック・どんでん返しの名作に数えられていながら今まで未読だったので読んだが、あまり合わなかった。真相は夏らしく恐ろしいものであるが、そこまで驚くことができなかった。好き嫌いが分かれる作品だろうという印象を受けた。

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

 

 早坂吝『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』

 タイトル当てという仕掛けが施されている、珍しいタイプの作品。清々しいまでの下ネタで一周回って笑えてしまった。タイトル当てには正解することが出来たが、馬鹿馬鹿しすぎて良い意味で脱力してしまった。

 

新装版 マリオネットの罠 (文春文庫)

新装版 マリオネットの罠 (文春文庫)

 

 赤川次郎『マリオネットの罠』

 褪せない面白さ。3章構成にメリハリがあり、ページを繰る手が止まらなかった。種明かしはややフェアでない気もするが、展開がとにかく面白くミステリアスなので気にならない。