にぼしめし

備忘録

国道41号線の感傷:映画『ここは退屈迎えに来て』感想

映画『ここは退屈迎えに来て』を劇場で見た。橋本愛ちゃんの美しさに惹かれて、原作は読まずに臨んだ。

 『ここは退屈迎えに来て』は、椎名という男の子を軸とした断片的な群像劇である。
田舎に漂う諦念と、都会に対する期待と憧れのもとで、語り手と時間軸が入り乱れながら曖昧なモザイク画を描いているような映画だ。

いつもクラスの中心にいて、人を惹きつけてやまない椎名を成田凌さんが、彼と付き合っていたことを忘れられない女の子を門脇麦ちゃんが、彼に憧れていた女の子を橋本愛ちゃんがそれぞれ演じている。

全編にわたって、奇妙な現実感とままならなさが支配している。寂れかかったゲームセンター。ショッピングモールの階段。教習所で働くかつての憧れの人。色褪せた景色たちの中で、自分の中の何かに折り合いを付けながら生きている姿はあまりに生々しい。

だからこそ、終盤のプール掃除を回想するシーンの鮮やかさと美しさが光る。橋本愛ちゃんが演じる「私」が新保に見せた密やかな笑みがあまりにも綺麗だと思った。
水色にきらめく青春の象徴のようなプールの中で、制服が濡れるのも厭わずにはしゃいでふざけ合う風景はあまりに非現実的だからこそ、くっきりと輪郭を示して存在する。

きっと、あのプールのような場面が人生の中にあるからこそ、私たちは退屈な世界の中で生きていけるのだろう。

もう一つ印象的なシーンを挙げるならば、門脇麦ちゃん演じる「わたし」がフジファブリックの『茜色の夕日』を歌うシーンだ。とても寂しくてやりきれないシーンなのだけれど、門脇麦ちゃんの澄んだ歌声が染みるように響きわたっているのが心地良かった。
原作通りなのかどうかわからないけれど、志村さんの時代の曲である『茜色の夕日』を選んだセンスはとても良いと感じた。

 

曖昧で起伏のない映画なので人には勧められないけれども、プールのシーンが本当に本当に美しかったので観て良かったなと思う。
ラストカットで、『ここは退屈迎えに来て』というタイトルが掲げられたその背景が東京の空、というのはなんとなく示唆に満ちていて美しく感じられた。